動作動詞「来る」と「行く」は、助動詞として動詞にとともに使われ、ある場所やある時に話し手とその動作がどのような関係にあるかを示す。
例文(1a) 食べてきました。
例文(1b) 食べて行きました。
「来る」というのは、話し手の方向に空間的に動作が向いている(つまり、この場合話し手は今いる場所に食べたあとで来た)。
「行く」は、話し手の方向から空間的に遠いところへ向かっていることを示す(つまり、話し手は食べたあとでその場所から離れたところへ移動した)。
ここで重要なことは、「来る」と「行く」がここで使われているのは、ここでの動詞自身(食べる)に今現在の話し手とその行動と関係づけることができないからである。
また、「来る」と「行く」は、動作の過程や流れ、変化の動詞とともに用いて、話し手に関する変化を表すことができる。「来る」は時間的に話し手の方向に向かってある変化が起きていることを示す(今にいたるまで)。「行く」は時間的に話し手から続いてこのさきに起こる変化や経過を示す(今後)。これは図でしますと以下のようになる。
てくる ていく 過去 現在 未来例文(2a) みるみる変わってきました。
例文2aでは話し手は変化を振り返って見ているーすでに変化は起きている。例文2bでは、変化はこれから起きる。
このような「来る」のつかいかたでは2つの基本的な用法がある。動作の継続と動作の開始である。
例文(3a) 今までずっと我慢してきました。
例文(3b) 一生懸命生きてきました。
例文(4a) 寒くなってきました。
例文(4b) このごろ太ってきました。
例文(4c) 頭が痛くなってきました。
例文3は現在にいたるまでの継続を示している。 例文4は、ある変化が始まって、それが現在まで続いていることを示す。
「てくる」は変化や経過を示す。では、「てくる」と「ようになる」はどう違うか?
例文(5a) わかってきました。
例文(5b) わかりました。
例文(5c) わかるようになりました。
例文5bは瞬間的な出来事を表す。経過や変化を表す2つの表現のうちで、5cは変化は過去に起きたことで、完了している意味を含む。一方5aは、話し手がここでいまいるところで変化が起きている。
例文(6a) 寒くなりましたね。
例文(6b) 寒くなってきましたね。
6aも6bも秋になって少し寒くなってきたら使える。6aはこの変化がまあ完了したものであることを示すのに対して、6bはこの変化はいま起こりつつあることで、話し手がその中にいることを示す。だから6bはより今に近い変化について言っているという感じがある。